「ありまさ あり〼」が出来るまで ~M君の透明な仕事

ありまさのニュースレター「ありまさ あり〼」は2021年夏に初号が発行されましたが、
こういう印刷物を作りたいな…という妄想と構想は何年も前からありました。

確か2019年に「われら茶柱探検隊」にインタビューを連載するのが決まった時も、
打ち合わせを兼ねて店にお蕎麦を食べに来て下さった編集者さんに
「インタビューの他にも、ニュースレターをやりたいんです。レイアウトも大体決めてあって…」
と熱く口走り
「い、いろいろやりたいんですね(^▽^;)」
とはいえまずは茶柱の連載を面白くしましょうね…
という当然の流れになったのをよく覚えています。

時は流れて2021年…
誰も予測できなかったコロナウィルス感染症による緊急事態宣言によって、私達は休業を余儀なくされ、
突然の時間が生まれました。
私はあちこちの裏紙に書きなぐっていたレイアウトを寄せ集め、尊敬している友人たちに連絡を取り始めました。

ありまさは無添加、手作りにこだわっている店です。
これは私が長年医療系のライターをしていたこととも関わりがあって、
健康の基礎は食(と運動)だと思うから。
というわけでニュースレターを作るなら医療コラムを掲載したい。
医師で栄養学にお詳しい、長谷川雅江さんに連絡を取りました。

季節のお蕎麦のお知らせ、ありまさに関するエッセイ(普通盛りの日々)は私が書くとして、
店主のご挨拶は当然店主が書くとして、
こういう読み物で一番大切なのは息抜きと言うか、お楽しみのコーナー。
通常だと漫画や占い。
ですがせっかくなら…
コント作家のユーカリノさんにメールしました。
緑が丘近辺の皆様に、作家さん書き下ろしの短いコントを楽しんで頂くという、
ものすごい贅沢をお届けできることになりました。

そしてこれらをレイアウトしてくれるデザイナーさんは…
なんだかんだでコンテンツが多く、
それぞれ主張も強く、
各自の良さを活かしつつも統一感を出すというのは大変な作業です。

これは画家で、
相模原で「おえかき小屋」というお絵描き教室を主宰している生嶋なぎさんにお願いすることにしました。
絵画やイラストのお仕事、そしてコロナ対応をしつつ沢山の生徒さんに絵を教えるというご多忙にも関わらず、
引き受けて頂けました。

ここで突然ですが、
私は男女間に友情は成立するか否か? という問いに
「ふつーに成立するよね?」
と思う派です。

それは…その…あなたが更年期のおばちゃんだからでは?
と奥ゆかしく口ごもる方もいらっしゃるかもしれませんが、
20代の頃からしっかりとそう思っていまして、
それは…その…あなたに女性として決定的な何かが欠けているからでは?
というご指摘は思い当たるふしも多く、全くその通りかもしれないものの、
世の中には性別を問わず素敵な人が沢山いるから、いちいち恋愛してると疲れるよね~、
という私のくたびれやすさ、根っからの「無精体質」も大きな原因ではないかと自己分析するこのごろです。

で、大学時代から長年つきあっている(あの「つきあっている」ではない)男友達が2人いて、
卒業後も20年以上たまに会ったり、しゃべったりしていました。
お互い様に取り巻く状況はくるくる変わるけれど、
会えば相変わらずな調子で話せる貴重な人達。
一人は大企業に勤めるTくん。
日本では知らない人がいないキャラクターのデザインをしたり、素敵なインスタレーションを作ったり。
もう一人は「ワーキングプアの最前線」を名乗り、会うたび違うバイトをしていて、時間ができると海外を放浪したりしているMくん…。

2人はありまさが開店した時も当然のように来てくれて、せっせと呑んでくれたのですが、
ふとMくんが
「そういえばこの近くに高校時代の同級生がいるはずだから、連絡してみるよ」
というのです。

そして後日、東山美奈子さんがお友達を連れて店に来てくださいました。
「あの~、Mくんってご存知ですか?」
知ってますよ!
「私と、こちらの生嶋さんはMくんと高校が同じでして…」

東山さんと生嶋さんは二人ともアーティストで、東山さんはジュエリーデザイン、生嶋さんは絵画、
奥沢で二人展を開催する準備をしているとのこと。

後日二人展にいそいそと出かけ、ジュエリーと絵画が語り合う静謐で美しい世界を堪能しました。
お二人の作品に魅了され、それ以降お二人の展示は出来る限り出かけるようにしています。

長くなりましたが、生嶋さんとはそうして出会っています。
長谷川さんやユーカリノさんとも出会いのエピソードがあるのですが、
それはまた別の機会に…。

私は毎回「ありまさ あり〼」が出来るたびに、
「長谷川さん、ユーカリノさん、そして生嶋さん、
(2021年秋号からは「私の好きな ありまさのアレ」コーナーの執筆者の方、2023年春号からは俳人の智はるさん)
今回も本当にありがとうございます!
皆さんに喜んでもらえると思います」
とつぶやき、最後になぜかMくんを思い出します。

彼は別に、特に何もしていないのですが(笑)。

でもこれは彼の透明な仕事。
何もしていないのでクレジットはしませんが、彼がいなかったらできなかった、
実はいろいろやってくれた大きな仕事。

そして世の中にある、
ひそやかに溢れていてる、
たくさんの透明な仕事にしばらく思いを馳せます。

これが初号。
当初は数号でもいいから発行できたら…と思っていましたが、意外にも続きました。
今みんなで2023年夏号を準備しています。
ちなみに毎回好評の店主の似顔絵も生嶋さんの手によるものです。
「素晴らしい福耳ですね~」というコメントを頂きました。










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