蕎麦屋の女将さんが考えたあまり普遍性のない接客の極意 ①話さなくていい

一人でいるのが大好きで、仕事は物書き、趣味は読書。
疲れるとすぐに
「ドリトル先生みたいに、誰にも邪魔されずに牢屋で原稿を書きたい…(動物の面会は歓迎)」
とつぶやく、どちらかというと人間が苦手な私が蕎麦屋の女将になって早9年。

開店した時は
「飲食店って毎日知らない人がいっぱい来るんだっ(怖)!」
「話とかできないし、面白話(ネタ)もないし。っていうか大きな声での挨拶とか死ぬ」
と恐れおののいていたのに、どうしてこんなにも働き続けられたのか…?

それは働き出してすぐ、実に単純な事実に気付いたからだと思います。

「…あっ…接客って…話さなくてもいいんだ!」

歓迎の気持ちを表す
「いらっしゃいませ(^▽^)/」
そして
「こんにちは(こんばんは)」
は必須です。
お席へのご案内も分かりやすく致しましよう。
聞かれたらお蕎麦や料理の説明をしたり、ご注文を正確に伺う、それを厨房に伝える、お飲み物や料理を速やかに提供する…。
当然これらもきちんとやります。

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まちの蕎麦屋の女将になるとは…人生は分からないものです。

ですが、その後は基本的に
■お客様のお話を伺う
■何か聞かれたら、答える
という受け身でOK。

もちろん前回いらしたときにケガをされていた…というような事情があったら
「その後お加減いかがですか?」
というようなことをこちらから申し上げることもありますが、
ケガや病気を蒸し返されたくないという方も少なからずいらっしゃいますし、黙っていても大きな問題はありません。
(お客様との思い出を綴った「お客様連絡帳 A様」でも私はひたすらAさんのお話を聞いています)

そう、特にこちらから話さなくていいのです!!
いやむしろ、もし話したいことがあったとしても、こちらから話さない方がいい(場合が多いです)。

なぜなら、お客様は飲食店スタッフの内面に特に興味はありません。
美味しいものを、適切な価格で、気持ちよく食べたい!!
そして(副次的に)自分が話したいことを、話したい!
基本的な欲求はここに集約されています。

私達はご来店に心より感謝しつつ、それらの要望に全力でお応えすればいい。
こうして文字にすると実に当たり前のことですが…
それがお仕事です。

だからこそ、特に要請がなければ
スタッフはしゃべらなくていい。
ただ機嫌よくそこにいて、何かあったらすぐに対応させて頂きます!
という気持ちで存在していればいい。

これに気付くと、接客はかなり、一気に、みるみる楽になると思います。

私見ですが、おしゃべりを上手くすることよりも、
「機嫌よく存在する」ことに注力した方が生産性も上がる気がします。
スタッフの機嫌が悪いのかな? と思うとお客様はオーダーしづらいし、スタッフ同士もちょっとしたことを頼みづらい。
限られた時間の中で多くのご注文を頂き、
お料理やお蕎麦を間違いのないタイミングでご提供するためにも、
スタッフ一同が心も体も調子良く、機嫌良くしておくと大局的にお得、なのです。

それに…
機嫌が悪いスタッフがいると気持ちの優しいお客様は
「何かあったのかな?」
「大丈夫?」
と、心配して下さったりもします。
お客様はひととき心の荷物を下ろしに、リラックスするために来て下さったのに、心配をかけてどうする…。
(しかしどう頑張っても心配をかけてしまう局面もあり、それについては次の記事②をご覧ください)。

私達スタッフも人間なので舞台裏でいろいろあるのは当然ですが、
ちょっと辛いコトがあっても「ま、それはそれとして…」とやせ我慢する、
時にはニコっと微笑める、
それが出来るといろいろなことが滑らかに動き出す気がします(無論、忍耐しすぎはダメですよ。無理しない範囲で、ですが)。

というわけで今日のまとめは
無理にしゃべらなくていい。
機嫌の良さは接客の基礎工事。

でした。

飲食店の接客・蕎麦屋での会話という
極めて限定された、全然普遍的ではないコミュニケーションの話にお付き合い下さりありがとうございます。

次回は「スタッフの元気が出るレシピ」と「お客様の機嫌が悪い?」についてです。

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こう見えていろいろ考えてはいるのです…

追記
ただ、この「しゃべらなくていい」は関東限定かな?
と思うこともあります。
以前大阪からいらしたという同業のお客様に
「女将さん、飲食はしゃべってナンボやで!!」
というアドバイスを頂きました。確かにお国柄、土地柄というのはありますよね。
ですので、というわけで、全然普遍性がない話ですみません…。

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