蕎麦屋の女将さんが考えたあまり普遍的でない接客の極意 ④お話を伺う・初級

飲食業では「基本的」には
「お客様のご注文通りに料理をお出しすれば、それでよい」
わけですが、状況によっては会話が生まれることがあります。
これが悦びという方もいれば、
実はこれが苦痛(すみません)…
という方もいらっしゃると思います。

スタッフは特に話さなくてよい、ということは①で書きましたが、お客様が自分に向かってお話をされているならば、これは伺わなくてはなりません。

もちろん飲食店なので
「今、調理中」
「お会計です。レジ打ってます」
「お片付け、皿洗い、掃除しないと…」
と忙しいですし、一見何もしていないように見えても
「あのお客様のお冷(お水)を足した方がいいかしら?」
「そろそろお取り皿を交換しないと」
「ご予約のお客様が遅れているな…」
など心が忙しいこともあります。

ムリは禁物で、忙しい時は話しかけられても
「あ、すみません、今ちょっと手を離せませんが…
この後伺いますね(^_-)-☆」
と一言お伝えすれば大丈夫です。
あなたがてんてこ舞いなのは理解して頂けます。

で、店内にちょっと落ち着いた状況が訪れたら、お客様のお話を伺うことになります。
まずはじめに、
とりあえずのテクニックをお伝えしますね。
「なんて表面的な…」と思われるかもしれませんが、初手は大事。ここをしっかり押さえておきましょうという基本中の基本です。
表面的でない、本質的だけれどある意味ちょっと難しいことは後程お伝えします。

まずは
■お客様の方を向く
■お話をさえぎらない
■うなずく
■相槌を打つ

です。
もちろんお話の途中で別のお客様のご来店があったり、電話がかかってきて中断ということはよくありますが、その場合は先ほどの☝セリフでお詫びして…
それ以外はできるだけお客様の方に体を正対させ、
お話はこちらから中断しない。

相槌は、昔
「合コン さしすせそ(さすが~、知らなかった~、すごい~、センスいい~、そうなんだ~)」
を使うといいというアドバイスがありましたが…
これはお客様の(そしてスタッフの)お人柄次第ではないでしょうか。
もともと合コン用ですし、万能ツールではないと思います。
個人的には(個人的には、ですよ)、私はこれが散りばめられた会話がちょっと苦手なので
「さしすせそ 使いはするけど 多用しない」(ありまさ心の俳句)
という方針です。

私は
あー、ほぅ、ねなるほど~、勉強になりますね~、その後どうなりましたか?
など、それほど可愛くないお返事をしていることが多いようです(夫調べ)。
もともと陰キャですし合コンも行ったことがないので無理しないようにしているだけなのですが、これで大きな問題はありません。

気を付けることとしてはお客様によっては
目が悪い(スタッフのうなずきがよく見えていないことがある)
耳が悪い(小さい声の相槌は聞こえていない場合も)
ことがあるので反応を観察し、その場合は臨機応変に。

そしてたまに言葉を差しはさむ時に
「へー、その後どうなったんですか?」(話題の伸展)
はアリだと思いますが、
「ふむふむ、で、結局どうなったんですか」(結論の促し)
「それって要は〇〇ですよね」(結論の提示)
とこちらから(スタッフ側)からまとめにかからない。
これは話を強制終了させられるのに等しいので、基本的に「さえぎり・遮断」になってしまいます。

※「それって〇〇ですよね?」というのは、場合によっては新しい価値観をお客様に伝えられる、視野が広がる素敵な提案の場合もあり、すべてが悪ということもないと思います。会話において、例外事項はとても多いです。
ですが、とりあえずここは初級コースということでざっくりしたまとめ方ですみません。

という感じに、お客様のお話を伺います。
いろいろ言われても…
とにかく会話が苦手で緊張しすぎて何もできなくなってしまうんです!!
という方は、まずは

笑顔で、大きめにうなずく(^▽^)

ここからはじめてはどうでしょうか?

というわけで今回は初級に留めて、中級以降は次回書かせて頂きますが、
最後に、
そうは言っても絶対同調してはいけない、お話をさえぎらなとダメな時もあります。
これは大事なことなので初級のうちにお伝えしますね。

それは話題がヘイト(〇〇人はダメだ、ジェンダー差別、弱い立場の人を貶めるなど)の場合。
お話している方も
リラックスしてつい本音が…とか、
年齢的にアップデートが追いつかなくて…とか、
ちょっとムシャクシャして何かにマウントをとりたくて…とか、
事情はおありだと思うのですが、
飲食店はいろいろな方がいらっしゃる公共の空間です。
なのでこういう話題は基本「さえぎる一択」(話している方も口が滑っている場合が多いので、さえぎったほうが話者の利益になることも多いです)。

こういう時は速やかに話題を変える、
にこやかに
「それはNGワードです~」
「誹謗中傷ですよ~」
「日本人にもいろいろいるし、〇〇人もいろいろだと思います~」
と言う。
何も思いつかなければ、誰も呼びかけていない厨房に
「今行きます~」
と元気に答えて走り去る(笑)。
一旦退場して呼吸を整えましょう。
とにかく一緒になってヘイトに加担しないことです。

まあこういうことは滅多にありませんし、
他のスタッフがいれば助け合うこともできるし、 
変な空気になると別のお客様が助けてくれることもありますから、
心配しずきることはありません。

(中級編に続く)

※このようにしてお話を伺っているうち、
お客様のお話があまりにも面白いので雑誌連載をすることになりました(季刊フリーマガジン「我ら茶柱探検隊」)。
こちらで読めますので、よろしければ…

インタビュー @カウンター – 蕎麦屋の女将さんの秘密の倉庫sobayanookami.com

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