蕎麦屋の女将さんが考えたあまり普遍的でない接客の極意 ⑤お話を伺う・中級

というわけで私達は「お話を伺う」ことの階段を一歩一歩のぼっていくわけですが、
ちょっと前回(初級)の補足説明をしますね。

うなずく
ということは簡単なようでいて、実は難しいことがあります。
それはお客様のお話に全然共感できない場合もあるからです。

世の中には本当にいろいろな感じ方があり、価値観があり、様々なカルチャーがあります。
同じ天気でも
「暑っっ!」
と思う人もいれば、そうでない人もいるし
夏休みで羽田空港が大混雑
というニュースを見て
「いいな~、私も出かけたい!」
という人もいれば
「うわー、こんな時に旅行なんて狂気の沙汰だね…」
と思う人もいます。

ものすごく暑くて冷たいものを欲しているときに
「なんかあったかいもの飲みたいよね~」
と言われたら、うなずけないのは当然です。

まあ、それはそうなんですが、
私は共感できなくてもとりあえずうなずいた方がいいんじゃないかしら?
と思っています。
第一の理由は
「お話を興味深く伺っています」
ということを言語ではなく視覚的にお伝え出来るからです。

聞き手がうなずいていると、話し手はすごく話しやすいです。
以前、簡易な心理学の実験を見学したことがあるのですが、
・聞き手がうなずかず、体を斜めに向け、足を組み、腕組みをしている
・聞き手がうなずき、体を正対させ、足を組まず、腕組みもしない
だと圧倒的に後者の方が話し手が話しやすい…のです。
これは自分が話す場合を考えても容易に想像がつくと思います。

ですので、話し手に負担をかけないという意味でも、うなずくのはおススメです。

とはいえ共感できないのにうなずくのはちょっと…と抵抗がある場合ですが、
うなずくという行為は、共感だけでなく
「あー、お客様はそのようにお考えなんですね、なるほど~。受け止めました」
という
「キャッチしました!」
をかたちにしたもの、と捉えてはいかがでしょうか?

その上で、状況次第で
「そういうお考えもあるんですね」
「考えたこともありませんでした」
などをと付け加えてもいいと思います。
関係性によっては
「そうですか…私はちょっとアレですが(笑)」
と言うこともできます。

ポイントは、お話を伺うときに特に共感や同意は必要ないということです。
自分の意見も特に言う必要はないです。
言ってはいけない、ということではなく、言いたいときは言えばいいのですが、言わなくても全くOKです。

世の中は違う考えの人だらけです。
ある局面では同意見でも、別の場面で意見が分かれる、なんてこともザラにありますし、むしろそういうことの方が多いです。
私は家族でも、夫婦でも、恋人でも、友達でも、愛するペットでも
私とすべての点で全く同じ意見の人、動物(犬・猫・魚・鳥・りす…いろいろいましたが)には出会ったことがありません。

みんな、違う。かなり違う。
そこを楽しむしかないです。
そしてそんな違いを認め合う第一歩が
「あ、あなたはそう思うんですね~」
といううなずきです。

補足が長くなってしまいました。
今回は中級なのですが、このあたりからは私もできません(´;ω;`)ウゥゥ
正確に言うと、できる時もありますが、できないことも多いです。
(正直に言うと初級もできないこともあるかも…)

反省しつつ少しずつ進んでいくわけですが、
中級の要(かなめ)は
伺ったお話を要約する
(→しっかり受け止めて理解していますよ、ということを話し手にお伝えする)

です。

これはライターとしてインタビューの際に随分訓練されていた私でも、まあまあ難しい技術です。
でも、これが出来るとお話している方は、
「あー、ただウンウン聞いているだけでなく、この人は私の話きちんとを受け取ってくれたんだな。(共感しているかは別としても)理解してくれているな」
と感じることが出来、それ以降ぐんとお話しやすくなりますし、お話も深まります。
狙っているわけではありませんが、盛り上がることもあります(ちなみに私は「会話は特に盛り上がらなくてもいい」派、ですが、これについてはまた後程…)。

一番いいまとめ方は、聞き手が自分の言葉でお話をまとめられることです。
自分の感想は抜きで
「このお話は、〇〇が〇〇して〇〇ということなんですね~」
という感じです。

これはお話を伺いつつ、内容の時系列を整え、キーワードをピックアップし、短くまとめ、それを自分の言葉で言い換え…

ということになるので、いろいろと忙しい飲食店の店員としてはね、
ちょっと大変ですよね。

ここでゴール(お話をきちんと受け止めています、と相手に伝える)から逆算的に考えると
とりあえず要約する(自分の言葉でなくていい、お客様の言葉をそのまま使用)
キーワード、一番大事と思われる出来事を抜き出して伝える(肝心なところを鸚鵡返しする)
で十分です。

これも大変だったら、感情をこめて
「それは大変でしたね」
「ああ、良かった!」
「腹が立ちますよね~」
みたいな自分の感想・意見を伝えるという方法もあります。
これでも十分「受け止め」にはなります。

もちろん一言感想を伝えるだけだと
「内容を理解しているかどうか」
についてはちょっと曖昧になりますが、そうは言ってもお話を伺ったからこその感想です。

今回は、お話を伺って、受け止めたことをお伝えする。
できたら要約したり鸚鵡返しをする。


でした。
次回は上級編です。

(続く)

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