蕎麦屋の女将さんの考えたあまり普遍的でない接客の極意 ⑦質問されたら?

お客様から質問されたら、答えればいいです(笑)。
いろいろ聞かれるというのはそれだけ親しみを感じて頂いているということですし、興味を持ってくださっている証拠。
やりとりを重ねる事でお話が深まり、楽しいコミュニケーションになることは多いです。
もちろん飲食店は忙しいことも多いですから、あまり長くお話できないことも多いですが、できる範囲で。

ただ質問の内容によっては「答えたくないな」と思うこともありますよね。答えたくないことは答えなくていいのですが、角が立たないようにはぐらかすのは、確かにちょっと大変です。

今回はそれについて考えてみようと思います。

よく聞く悩みに(特に若いスタッフさん)
「お客様がプライベートを根掘り葉掘り聞いてくるんです…。
結婚しているの? 彼女(彼氏)いるの? どこに住んでいるの? 出身は? 学歴は? 
親御さんは何をしていらっしゃるの? これからどうしたいの?…etc 」

この人は私の釣り書を作って仲人でもしてくれるんだろうか?
と思ってもそんなことはなく、ある程度お答えすると
「そうなのね~(終了)」

ご本人は好奇心を満たしたいだけなのでしょうが、それを聴いている別のお客様もいらっしゃるし、あまり個人情報は公開したくないな…ということも多いと思います
(もちろんスタッフが「それは…」と口ごもっていると、状況を察してサラリとお話の向きを変えて下さるお客様もたくさんいらっしゃいます)。

私は結婚しているし、何より夫がいつも近くにいるので、いろいろ聞かれても、それほど身の危険は感じません。
とはいえ、
それでも、
言いたくないことはあります。
また
「それは言いたくないです~」
「秘密です~」
と言える場合はいいですが、言い辛い局面が多々あるのも理解できます。
しかし断りづらいからといって、何でも正直に伝えるのは危険すぎる。
今はネットを使えばSNS等をたどってかなりの「特定」が可能ですし…。

ちなみに既婚の方でも、家族や子供のことは言いたくないな~とか、
逆にどんどん話しちゃう方とか、スタンスはいろいろです。
どうせある程度ネットでわかっちゃうんだから、話しても全然問題ないよ? という考え方もありますね。
ただ、私は若いスタッフさんについては、やはり心配してしまうんです。
大きなお世話かもしれませんが…

で、
「答えたくない」時にどうするか…ですが、
プライベートに関する質問については、個人情報ですし、
「設定」を作っておく
のもアリだと思います。

実際は
地方出身で、独身で恋人はいなくて、一人暮らし
でも、
「設定」は
両親は都内に居て、婚約していて(婚約者の仕事の関係で結婚の時期は未定)、今は店から離れた場所で友達とルームシェアしている
…とか。
ある程度ストーリーを練っておきます。

実際、
「最近離婚したんだけど、面倒だからお客様には伏せてる」
というような
「(結果的にはちょっと嘘をつくことになるけれど)あえてこちらから語らない」
「全部じゃないけど一部はフィクション」
みたいな方法を採用している方もよくお見掛けします。

学歴も、
「大学院に行ってたんだけど、これを言うとカチンとくる人がいたから、大卒ってことにしている」
という方がいらっしゃいました(実話)。
少な目に盛る、という選択ですね。
ある意味学歴詐称ですが、就職のための話ではありませんし、ここもさじ加減だと思います。

私は大した学歴ではありませんが(そうは言っても勉強させてくれた親には感謝していますが)、やはり
「おねえちゃん、大学卒(で)てる?」
と聞かれて
「はい」
と答えたら
「ったく最近はこれだよ。可愛くねーなー。酒が不味くなるわ」
と吐き捨てるように言われたことがあります。

食に関しては「目下の人に傅(かしず)かれたい」という方はまあまあいらっしゃいまして、
私個人的には
学歴とか関係ないんじゃない?
中卒で凄い方も沢山いるし、院卒で凄い方も沢山いるし?
とは思うのですが…、
料理は、そして飲食業は「誰でもできる簡単な仕事」と認識している方も少なくないのです(「大学を卒てまでやる仕事じゃねえだろう」とか何回か言われました)。

だからここ(学歴)についても「設定」を作るのはアリかもしれません。
もちろん
「院まで行きましたけど、やっぱりどうしても料理をやりたくて、店を開きました(^▽^)/」
という打ち出し方も可能です。
本人のキャラ次第とも言えます。

(補足ですが、
嘘はつきたくない…
と抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、
本当に大丈夫そうな方には、後日
「ごめんなさい、あれは『設定』で…」
とお話すれば大丈夫だと思いますよ。
設定を作っている背景、事情も説明しましょう。
全く問題ないですし、むしろ秘密を共有すると以前より仲良くなれます)

そしてもう一つの具体的な方策としては
とにかく話題を変える
です。

以前あるお店で
お客様
「料理ってやっぱり専門(学校)で勉強するの?」
店主
「いや~そこは勘弁してください。若い頃は映画が好きでやりたかったんですよ。だけどその道には行けなくて。そういえば『ミッション・インポッシブル』ご覧になりましたか?」
というやり取りを聞いて、

うーん、上手い m(__)m ←勉強になりました、と頭を下げている

と思いました。
学歴は曖昧にしておく、でも趣味は伝える(これは多分本当)、
そして趣味を伝えることで話題は広がる
(もしお客様が「ミッション・インポッシブル」を見ていなくても、トム・クルーズ本人や「トップ・ガン」について話すとか、映画に興味がない方だったら「いつまで働くかとか」「体のメンテをどうしているか」とか、
いかようにもなります)。

こういう「得意ジャンル」を持っているのはいいですね。
できたらお客様の年齢層に合わせて複数あるといいかも。
「映画」「音楽」「スポーツ」「健康」「観光スポット」「アウトドア」「囲碁・将棋」「ゲーム」…
仕事と直結する話題では
「美味しい店」「スイーツ」「カレー」「日本酒」「焼酎」「ビール(地ビールなど含む)」「ワイン」…
そういう深堀りできる対象がない場合は、とりあえず
「今、気になっているニュース」「最近読んだ漫画や本」「見たい映画」
などを整理しておくのもいいです。
普段つらつら考えていても意外と咄嗟に出てこないこともあるので、書き出しておいたりすると思い出しやすいです。

「マツコの知らない世界」ではないですが、うんちくって、本当にそれを愛する人が語り出すと最高のエンタメです。

「私はこの前の連休で箱根に行ったんですけど、お客様はどうなさっていましたか?」
というような質問からお客様の休日の過ごし方、趣味などを推し量っておくと話題も選択しやすくなりますよ。

というわけで、飲食店スタッフは
プライベート(個人情報)を知られないために、
プライベート(私生活、内面)を充実させておく

ちょっと面倒に感じるかもしれませんが、急がば回れ。
おススメです!

次回は今回の内容を受けて 
「嫌な目にあったら?」
です。

(つづく)

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