世にも不幸な出来事

大人になってから出会った作品ですが(書かれたのが1999年だから仕方ないですね…)、若いうちに読んでいれば…と悔やまれる「暗いジュブナイル」界の金字塔。
これについて語りだすと普段は押しつけがましくない私が豹変して誰彼構わず全巻買いをお勧めするという、傍迷惑系の大傑作です。

最近はネットフリックスでドラマ化されていますし(私は未見)、かなり前ですがジム キャリーで映画化されたのを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。

映画は原作の1~3巻の部分のみの映像化でしたが、かなり面白くできていました。

https://www.netflix.com/jp/title/80050008

パンフレット写真

両親を火事で失った三人きょうだいが、里親となる大人たちの間をたらいまわしにされるという悲しいお話。

出会う大人は大概が愚かで欲が深く、時には極悪人で、たまにいる善人はすぐに死んでしまう…。

きょうだいはとにかく自分達だけで、度重なる試練を乗り越えなくてはいけません。

それぞれの得意技(長女バイオレットは機械いじり、長男クラウスは読書、次女サニーは強靭な歯で噛みつくこと)を駆使し、組み合わせ、とにかく三人で力を合わせてなんとかやりくりする。

毎回かなりの難題に取り組む冒険譚でありミステリーなので、一冊読み終わる度になんともいえない爽快感と、ずっしりした疲労感が味わえます。
たとえ難局を切り開いたカタルシスを味わったとしても、またすぐに信じられないような大問題が彼らの行く手を阻むわけですが…。

私は一時期このシリーズの刊行だけを楽しみに生きていて(…まあ、それもどうかと思いますよね…)、

待ちに待ったラスト13巻が発売される頃、出版社である草思社が民事再生法の適用を申請(2008年1月)。平たく言うと倒産。
あまりにも出来すぎていて「やらせ」かと思いましたがそんなわけもなく、ここまで読んでいたのに最終巻が刊行されないという世にも不幸な出来事に見舞われました。

しばらく食べ物の味が感じられないほど絶望していました。

が、続きが読みたい一心で原書を取り寄せ、読み始めました。

当時、英語は超苦手。中1レベル以下だったと思います。
私にあるのは繰り返し読んで頭に叩き込まれていた12巻までの情報と、「3人がどうなるのか知りたい」という闇雲な情熱だけでした。

スニケット独特のしゃれた言い回しなんてどうでもいい(本当は全然よくないけれど、そこを翻訳し出したら寿命が尽きてしまう)

あらすじがざっくり判ればいい…

辞書をひきひき、ジュブナイルなので大人の本よりは読みやすいこともあり、なんとか最後のページに…。

私が息も絶え絶えに原書を読み終えた頃、草思社は文芸社の完全子会社になり、無事に日本語訳の13巻も発売されました(同年7月)。

なので最終巻だけ原書を持っています。

不幸せは幸せの種(倒産という不幸で、翻訳者の有難みを知る)、
「世にも不幸な出来事」はひとに無茶をさせるくらい面白い、というお話でした。

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