蕎麦屋の女将さんが考えるあまり普遍的でない接客の極意 ⑪苦手でつながる

2015年1月に突然蕎麦屋の女将になり、現在9年目。
大学時代に短期間ドトールで働いていたことがありますし、学芸員資格をとって美術館で働いていた時も受付やミュージアムショップに立ちましたが、今だに接客は難しいと思います。
9年で慣れたことは多いですが、上手かというと…
我ながら「センスないなあ…」と思うことが多いのが現状で、道半ばというか、実際は「接客道」を歩き出したばかりなのかもしれません。

そんなダメ人間だからこそ必死で「接客のコツ」を体得しようとし、まとめたのがこの連続投稿なのですが、
いろいろ考えて試行錯誤しても、上手くいかないことも多いです。
今回は私の苦手を告白しつつ、弱点とどうつきあうか考えてみましょう。

お客様のお顔、お名前が覚えられない
飲食店とお客様のお付き合いは、基本お名前が分かりません。
今後は顔認証システムがどんな店にも導入されて…ということもあるのかもれませんが、今のところは脳内の顔認証システムを使うしかなく、これが私の場合…きわめて容量が小さいのです。

さすがに頻繁にお会いする方は憶えていますが、時間が経つと難しいです。
お顔はうっすらと憶えているけれどお名前は…ということも多く、
お話した内容は克明に憶えているけれどお名前は…という場面も多々あり、
すみません、名乗って頂けますか?!
と叫びたくなることが多いです。

そういう時はスタッフで助け合えば? と思いますが、夫は私以上にこれが苦手で(顔認証システム自体が未搭載)…皆さんどうされているのでしょうか?

お話が盛り上がっている時に、介入するのが難しい
お客様のお話が盛り上がっているのは、端から見ていても嬉しい光景です。
ですが、仕事としてそこに割って入り、お料理やお酒を提供したり、時にはお料理の説明をしたり、お皿を下げたり、お蕎麦を出すタイミングを伺ったりしないといけないことがあります。
上手な方は本当に滑らかに、お客様のお話の腰を折らず、「お話中すみません…」とすら言わずにそれらをささっと済ませることが出来ますが(頭が下がります)、
お客様との相性にもよりますが、私はこれがかなり下手…。
場の空気を中断してしまうこともあります。
なんとかならないでしょうか?

お客様のお声が聞き取れない(ことがある)
耳の具合が悪い時があります(波があるのです)。
あまりにも聞こえが悪いので耳鼻科に行ったら「問題ないですよ? 」と言われましたが、小さな声やあるトーンが聞き取りにくい。申し訳ないな…と思いつつ、聞き返すことが多くなります。
体の不調だから仕方ないといえばそうなのですが、これは結構悩みの種で、
もっと大きな声でお願いしますというのが難しいことがありますし、忙しい時間帯は聞き返すのも効率が悪いし…。

蕎麦湯のタイミングが難しい
これは蕎麦屋限定の悩みで、ただ別の業態でも
「熱いものをどのタイミングでお出しするか」
は悩みますよね…。
蕎麦湯の場合、通常は冷たいお蕎麦が提供された後、麺が少な目になった頃を見計らって熱々をお持ちするのが理想、ではあります。
この麺が少な目になった頃…が難しくて、召し上がるスピードは一定ではないですし、他のお客様との兼ね合い(ご来店があってお席のご案内をしていたり、オーダーに意外と時間がかかることもありますし…)で、うっかり時間が経ってしまうことも…。
逆に早すぎると熱々を楽しんで頂けなくなるので、それは避けたいし…。
このごろは心の中にいくつかのタイマーを並べられるようになりましたが、まだまだ修行中です。

■その他、過去にひどいギックリ腰を何回かやっているので、以前に比べて重いものを持ち上げたり腰を曲げるのが大変で、こういうことがじわじわ効いて動きが鈍くなり、それが接客全体のスピードを落としているなあ…とも思います。

他にも挙げればいろいろとありますが…。
以下はいちおうの解決編です⇩。

お顔とお名前問題については、長年飲食に携わっている方に伺うと
まずは「背が高い天然パーマさん」とか、「おしゃれ眼鏡さん」とか
見た目からのコピーやあだ名をつけている場合が多いようです。
お名前やその他の情報はおいおいそこに紐づけていく感じですね。

お名前が分からなくても職業や家族関係、前回のお話を憶えていたら会話は成立します。
この「あなたの背景は憶えています」「あなたに興味があります」ということをお伝え出来ていれば、どうしてもお名前が必要な局面でお名前が思い出せなくても、そのときは素直に聞いてしまって大丈夫とのことです。

あと普段から
「私は記憶力が悪くてどなたのお顔も名前も覚えられないです(忘れるのはあなただけではありません)」
というアピールをしておく方もいらっしゃいますね。ちなみに夫はこの方法をとっています。

お話の腰を折らずに必要事項をお伝えする、聞き出すには…
ですが、私の今のところの解決策は「お話の輪から少し外れたところにいる(できたら)権限のある方に伺う」です。
権限がある方だとその場で決断できますが、権限が無い方だと結局権限のある人に「すみません~」と聞きなおしてお話を中断させてしまうので、この見極めは重要かな…と。
基本的に
「ホールはお客様が入店した時からグループ内の力関係を見極めろ」
とはよく言われますが、しかしこれはかなりの上級問題だと思います。

耳、腰の不調については、時間が許せば実情をお話しています。治療はしていますが、頑張ってもどうしようもないところもあるので…。
耳については、補聴器をつけるほどではなく、とりあえずにこやかに聞き返すことくらいしかできません。お客様ごめんなさい…。

蕎麦湯のタイミングは…最近は失敗もかなり減りましたが、うちの場合はホールが一人なので不可抗力で遅れる場合があり、その時はお詫びします。
以前
「女将さん、一人でやるのは無理だよ。もう一人雇いなよ(そうすれば蕎麦湯も遅れないよ)」
と言って下さる方がいらして、ご迷惑をおかけするのは心苦しいしお気持ちは本当に有難かったのですが
「そうするとお蕎麦やお料理をこのお値段では提供できなくなるんです…」
と説明させて頂いたことがありました。

ホールが一人でデメリットがあるのは確かですが、人を雇わず人件費が抑えられているからこそ無添加のつゆとお蕎麦(自家製麺)をこの値段でお出しできるのです。
ホールを増員すると、それが確実にお値段にのってきます。

「そうか…それなら女将、一人で頑張れ!!」
ご理解を賜りありがとうございますm(__)m

というわけで、(裏)事情を説明してしまうのも時にはありかな…と思います。
お客様に甘えすぎないように…と戒めつつですが。

苦手分野は隠すことに腐心するよりも、オープンにしていた方が、風遠しがよくて傷の治りが早い気がします。
時には応援してくれる方もいらっしゃいますし…。
すべての苦手を克服するのは無理かもしれないけれど、少しずつ少しずつ向上していくことはできる、たとえアラフィフでも(笑)。
それだけは確かなようです。

(つづく)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次