店主
音大を出て、音楽を趣味にする人もいるんですね。
原
いるいる。まあ、一旦趣味というかアマチュアとして楽しんで、後からまた仕事にする人もいるけどね。
僕は趣味とか、アマチュアとか、すごくいいと思うの。
音楽に詳しいと、生きてて楽しいし。
逆にいわゆるミュージシャンになった人も、やりたいことが無くなったら、飽きたらやめればいいよ。
飽きたらやめなよ。
世の中には素晴らしい仕事が山のようにあるし、面白いことも目白押しだからね。
店主
いや、僕も本当にそう思うんですけど、ここ(店)に立ってると
「はー、面白いことが何もないわ。時間もお金もあるけど、やりたいことが見つからないの」
なんて言う人がすごい多くて。
なんでそうなるかなって?
原
あ、それはね、真面目というか、みんなちゃんとしないとって思いがちなのね。
ピアノが趣味なら譜面が読めて、バイエルくらいは弾けなくちゃ…とか。
いい先生はいないかしら…って探しはじめたりして。
いやいや、ウクレレに興味があったら今日買いに行って、自分流ですぐ弾いてみて、
「ウクレレはじめたんですよね~」
って言えばいいの。
他の楽器でもそう。まずは気持ちが熱いうちにやってみる。
やってみて「なんか違う」と思ったらやめればいいだけだし。
みんなはじめから頑張りすぎちゃうんだよ。
僕は大学だけじゃなくてヤマハでトランペットを教えたりもしてるけど、ほとんどの人が
「ちゃんと習って、ちゃんとできるようにならなくちゃ!」
って頑張るんだよね。
まあ僕らも若いころ
「ジャズをやるならクラシックの基礎をやれ」
とかね、とにかく武者修行して頑張って「基礎」を手に入れろって言われたけど、
あれはね
間違い!
です(笑)。
気軽にはじめてみるの。
まずは基礎とか言ってると、だんだん嫌になるよ。
趣味なんだから、自分を苦しめちゃだめ。
店主
それは他の勉強でもそうですね。
原
そうそう。数学もはじめにドリルばっかりやらされたりするでしょ。それが面白ければいいけど、そうじゃない人は別の道が、やり方があるよね。
僕はトランペット大好きだけど、同じくらい情熱を傾けていることがあって、それは映画を観ること、自転車に乗ること、カメラ、これは金もかけたな~。
あとギターを弾いて歌うこと、書道もはじめたし、詩も書いてるし
女将
忙しいですね。
原
やりたいことだらけ。カメラなんて、何年やっても下手だけどね。
友達にカメラマンがいるけど、卑屈にならなければいろいろ教えてくれるんだよ。
心から好きだと、そこで繋がれるの。
自転車も僕にとってすごく大事。
去年は金銭的に余裕がなかったけど、10万かけてチューンナップして、ギアとか変えて。
夢は自転車で四国や九州をまわること。
玉川のサイクリングロードとか、いいよね。
僕の最長記録は国立まで、往復60キロくらいは走ったかな。もっと走れるようになりたい。
自転車好きになるきっかけはブロンプトンってイギリスの自転車があって。
ブロンプトン博士が造ったすごいいい自転車。
惚れちゃってね~。
寒くない時はしょっちゅう乗ってる。自由が丘とかふらふらしてる謎のおじさん(笑)。
僕はレースに出たいという気持ちはないんだけど、
砧公園の近くに自転車オタクしかいない店があってね、そういうところで話すのも好き。
僕の職業を聞かれても「音楽家ですか、へー」
で終わって、また自転車話に戻るのも好き。
とにかく、興味があったら手を出してみる。
今は情報収集もしやすいし、入門講座とか、多いでしょ?
女将
ありまさのお客様で、カルチャーセンターに行かれてる方は結構いらっしゃいます。
原
楽しいよね。趣味は本当におすすめよ。
競争とかじゃなくて、それぞれが自分流に楽しんでやれるし。
どうしても勝ち負けが好きならスポーツをやるとかね。
スポーツも面白いでしょ、野球みたいに組織同士の頭脳戦みたいなのもあれば、もっと肉体的というか、身体機能に特化したのもあるし。
みんなもっと趣味のことを話してたら、世の中平和なのになあ。
お互いに褒め合ってね。
そういえばマイルス・デイビスも絵を描いてたね。
クリエイトするって本当に楽しいよね。
(その3おわり。4に続く)