しんきらり

やまだ紫先生の作品はどれも素晴らしいのですが、
一冊推薦してください…と言われたらこちらでしょうか?

はじめて読んだ時は20代に入ったばかりで、 ここで描かれている結婚も子育ても自分のこととしてイメージするのは難しかったですが、
そんな女の子(笑)でも不思議と深く感動する、当時から「これは漫画史に残る名作だ!!」と確信していた一冊です。

結婚して子供が二人、穏やかで不自由のない生活、時間が出来たからちょっと働こうかな…
一見すると平和すぎるような、幸福すぎるような暮らしの中に密やかに、しかし確実にいる鬼の姿をこれほど精確に描ける作家を、私は多く知りません。
描きこみすぎない、さらりとした線が美しく、また恐ろしい。

ちなみに当時はちくま文庫で読みました。
ガロ系の漫画と言えば、ちくまだったのです。

絵柄も語り口も全然違うのですが、現在コミックエッセイで大人気の野原広子先生の作品は、やまだ紫先生の娘だな~
と思うのは私だけでしょうか。

やまだ先生のパートナー白取千夏雄さんの
「ガロに人生を捧げた男~全身編集者の告白」
も素晴らしい一冊でした。
白取さんの編集者人生を語りつくした一冊ですが、
やまだ先生の闘病や最期についても書かれていて…ページをめくるのが辛いところもありました。
(「ガロ」マニアとしては青林堂の分裂についても興味がありましたが、それはまた別の話で…)

やまだ先生を見送られたのち、白取さんもご病気で亡くなられました。
お二人のお陰で、沢山の素晴らしい作品を味わうことが出来た…心より御礼を申し上げます。

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