出不精旅日記 台湾3日目(高雄へ)

ぐっすり寝て体力が少し戻ってきたみたい…
荷物をまとめ、名残惜しいけれどチェックアウトの時間です。
「出不精な人あるある」なのですが、何泊した宿から出かけるのも、また面倒なんですよね。
あ~、ここにずっといたい!
13日まで台湾にいるならそれまでずっとここにいてもいい!!
心は叫んでいますが、まあそういうわけにもいきませんし…

フロントに行くと、Jちゃんが
「さっき買ってきたテイクアウトをあたためるから、食べて行ってね」
夫の調子も回復してなんとか食べられそうなので、食べていくことにしました。

あ、これは本当にすごく美味しい。お餅と卵焼きが入っただしの効いたスープ?
胃腸に優しい感じの、疲れているときも食べやすい味と食感です。

なんと形容したらいいのか…具沢山の朝粥?

食べながら
「レンタカーやガソリンの代金、バス代、お茶、諸々で費用はいくらかかったかしら?」
と聞くと
「阿里山は私達が誘ったからいいの。宿泊費にインクルードよ」
と言うではありませんか…!

「そんなわけないだろう!」
と日本語で答えつつ、実費と迷惑料を計算して宿泊費に上乗せして払いました。
台湾の人は「客人に財布を出させない」というところがあって、うっかりすると知らないうちに全部支払ってくれる場合があります。気持ちは嬉しいし、彼らが日本に来た時にお返しするつもりだけど、今回は心配もかけたしね…

あはは、インクルードよ!

「また来るね~」
と駅に向かおうとしたら、Bくんが出てきました。
「寝てたんだよね~」
昨夜ほとんど寝ないで運転していたんですから、そりゃ寝てますよね。起こしてごめんね。
今回も何から何までありがとう!!

寝ぼけてちょっと髪が逆立っている人と、記念撮影↓。

半纏は日本に行ったとき買ったそうです

まだ疲労が残っているので、いつもなら徒歩ですが、タクシーで台南駅へ。

そこから台鐡で高雄に向かいます。約1時間の南下。
疲労困憊の夫は口数少な目でしたが
「阿里山には一緒に行かなかったけど、ホステルを辞めたIちゃんがわざわざ来てくれたのも嬉しかったね」
などと振り返りました。
(ちなみにIちゃんはこの翌年(2023.2)ありまさを訪ねてくれました)

高雄に着きました。
プラットホームに降り立った途端、台南と全然雰囲気が違うことに驚きます。

駅のつくりからして頑張っていて、意識高そうで、ここはなんというか…ちょっとギラギラした若者感があるんですね。
上昇志向、やる気を感じます。自己啓発系の本が好きそうな感じ。
台南駅の歴史を感じる、ちょっとすっとこどっこいな中年感とはずいぶん違うなあ。
ちなみに台北駅はきれいだし大きいし、設備も新しいけれど、若者感というよりは働き盛りの大人感があります。50代くらい。
ものすごい人数が使うから、年齢も国籍もまちまちのいろいろな人の都合を考えないといけない、目配りの良さと器の大きさを感じるからかな…。

駅のお人柄(?)も観察していると飽きません。

とにかく、まずは宿に向かいましょう。
大通りにはスタバとかマックとかサブウェイとか、チェーン店が多いです。

ファミリーマートやセブンイレブンなどコンビニもあちこちにある。
出来たばかりというきれいなホテルも…
町の新陳代謝の活発さが歩いているだけで伝わってきます。
夫が駅から10分弱の民泊をとってくれたそうですが、どこかしら…。
「担当の人が鍵を渡してくれるシステムらしい。建物の前で待っていてくれるはずだよ」

10分ほど歩いたら、ビルの前におじさんがいました。Jさんというそうです。英語もOK。
早速ビルの中に案内…と思ったら、ビルの横にホームレス風のおじいさんがいて

「日本の人だね。私は名古屋にいたことがあるよ」
と話しかけてきました。
「名古屋のどこですか?」
以前名古屋に住んでいたことがあるので、ついいろいろと話してしまいましたが、
ここを通るときいつもいるのかな?
女性としてはちょっと不安もよぎります。

とはいえビルには守衛さんもいます。
この方は英語は通じませんが、夫が中国語でやりとりできるし、言葉が通じない私にも身振り手振りで親切にして頂きました。

フロントのすぐ隣にはエレベーターと会談があり、エレベーターは鍵がないと乗れないそうです。
エレベーターで宿泊の階まで上がり、降りたら暗めの廊下を進み、部屋へ…。

入ったとたん、なんだか嫌な感じがしました。
天井がかなり低い、そして床も汚い。足元にほこり? いや土かも?
テレビにも一目見てわかるほこりが積もっています。これは拭かないといけないな…。
インテリアもなんというか…庶民的? というよりはこれを買いそろえた人の心の疲れを感じます。100均で揃えるにしても、うーん、もう少しやりようがあるような…。

しかしまあとりあえずJさんがトイレやシャワー、テレビの使い方について、説明してくれるのを聞かないと。
説明が中国語なので少しぼんやりしていたら、
突然夫が「うーん、よく分からないな。聞き取れないなあ」と日本語で言い出しました。

これは「英語でやってみて」ということなので、仕方なく聞いてみます。

鍵についてですね、あー…チェックアウトのことみたい。
ここは鍵を中に置いて退出しなくてはいけないのね、でもそうするとエレベーターに乗れなくなる。
だからエレベーターを鍵で空けて、それから??
え、このあとは私もよく分からないな(゜.゜)?
ではあとは中国語でお願いします。
結局、要するに
「退出時はまずエレベーターを呼び、鍵を刺して使えるようにし、エレベーターのドアに荷物を置いて閉まらないようにしてから急いで部屋に戻って鍵を室内に置き、部屋のドアを閉め(自動ロックされます)、エレベーターに戻ればフロントまで楽に行けるよ」

ということで、まあそんなに高層なわけでもないから階段を使えばいいじゃないかと思いつつも、Jさんの親切心からの複雑な説明を理解しました。
あとは守衛のおじさんは夕方までしかいないそうで、夜はフロントも鍵がかかっているから鍵を持ち歩くこと…。

Jさんが帰ると、夫は
「うーん、ちょっと狭いし天井も低いけど、まあ2泊しかしないし。ここには寝に帰るだけだと思ったから、とにかく安いところにしたんだよ。まあいいかね」
と寛ぎはじめました。
いやいや、改めて見回しても全然良くないですよ。
狭いし、汚いし、ちょっと怖いレベルです。

私が映画の助監督で
「しくじったスパイの最後から二番目の隠れ家(次の隠れ家で殺されます)」
のロケハンを任されていたら一発で「ここだ!!」と小躍りするレベルの、いい感じに煮詰まって切羽詰まった逸室です。

トイレのほこりの玉とシャワールームの砕け散ったタイルを見て
「最後の隠れ家の撮影もできるかもしれない…」
と思いました。ベッドの隣に折り畳んだ死体を入れるのにぴったりの棚もありますし…。

頭がズキズキしてきました。
宿泊料を聞いたら、確かに爆安なのです。高雄でこれは、状況によっては本当に有難い価格です。
お値段に見合ったものを提供しているのだから、Jさんや部屋が悪いわけではない。

しかしこれは、私は認められないです。
ここには泊まれない。許容範囲を超えている。
目の前のベッドでくつろいでいる人が
「バックパッカーの時にもっと狭いところも泊ったな~男ばっかりだし、まあ安けりゃいいんだよね。なつかし~」
みたいなことを言っていますが、私はバックパッカーではないし、女性ですし。
それに我が家はお金持ちではないですが、たまの休暇に普通のホテルに泊まることくらいは、できなくはありません。
なんでこういうところをケチって、旅の疲れを増大させるのか…。

というわけで、
正直に書きますが、
ここで私は切れました。

「無理無理無理! 無理無理!」
本当はホテルを取り直したいけれど、この時点で探すのは難しいでしょう。
「とにかく! 今から! この床や、トイレや! 触るところを全部アルコール消毒する!!
だから今すぐアルコールを含んだ使い捨てのお手拭きを買ってきて!
コロナでどこでも沢山売っているから!!
あと私が好きな飲み物を買ってきて!! 自分の好きなものじゃないよ、妻が好きなもの!!」

慌てた夫はすぐに駅前のホテルに空き状況を聞きに行ってくれましたが、案の定満室だったそうで…。
ドラッグストアでアルコール綿を買って、このあと二人で部屋中を拭き掃除しました。
「お金を払って掃除するなんてね…」
「掃除ってはじめるとつい頑張っちゃうよね…」
とつぶやきつつ、床も棚も水回りもきれいにしました。
布団カバーや枕カバーも替えることはできませんが、これは持っていたタオルを巻くことにしました。

というわけで、この日は疲れ果てて、という切れまくって(恥ずかし~)、写真もなくてすみません。
部屋でファストフードと果物を食べ、それぞれ持参した本を読み、読み終わるとお互いの本の素晴らしさについて語り合い、
気が付いたら熟睡…。
諸々しくじったのは確かですが、私達はスパイではないので狙われることもなく、長かった1日が終わりました。

続く

まとめ
台湾の人が知らないうちに私達の分まで支払いを済ませている件
実はこの旅行の最後に行った台北でもそういうことがあり、後日お礼できる人だったから良かったものの、本当に油断ならないです。
ここ数年彼らとおつきあいさせてもらって分かってきたのは、贈ることや奢ることに価値があり、すぐにお礼が欲しいというわけではない(もちろん私達は感謝を伝えてお礼しますが…)。
多くの人が「あげること」に重きを置いているので、貰った方は比較的あっさりしていて、何か頂いてもノーリアクションという場合もあるそうで、しかしあげた方はプレゼントした時点ですでに満足しているのでリアクションがなくても全然OKという感じです(もちろん個人差はありますし、年代によっても微妙に変わるでしょう)。
多くの人が「差し上げること」に価値をおいて暮らしている社会なので、全体としてはバランスがとれているのだと思います。
日本だと頂いたら「まずはお礼を…」と思いますが、文化の違いなんですね。
どちらが正しいとか間違っているということではなく、それぞれの文化であり習慣であり、違いを知ってお互いの本意が伝われば大きな問題はありません。

違いを知ること、本意を伝え損なわないようにすること、
異文化交流ではこれらにエネルギーを使うのは大事なのかも…
あ、日本人同士であってもそうかもしれませんね。

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